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研究・繁殖・環境
2021.03.23

いおワールドかごしま水族館の協力を受け、当館バンドウイルカが人工授精により妊娠しました

名古屋港水族館で飼育しているバンドウイルカ「ゼロ」が、人工授精により妊娠しました。無事出産すれば、当館では2例目の事例となります。
今回は精液保存の技術・実績があり、当館と技術協力関係にある、いおワールドかごしま水族館(鹿児島県鹿児島市)の雄個体の精液を用いて人工授精を実施したものです。
順調な経過をたどれば、今年の9月から10月頃の出産となります。

妊娠個体(名古屋港水族館)

個体名:「ゼロ」
推定年齢:20~21歳
体長:274㎝
体重:259㎏
搬入日:平成19年3月12日

「ゼロ」

精液供与個体(いおワールドかごしま水族館)

個体名:「ラスター」
推定年齢:29歳
体長:297㎝
体重:306㎏
搬入日:平成9年2月19日

「ラスター」提供:いおワールドかごしま水族館

「人工授精」の実施

実施日:令和2年9月20日、21日

内視鏡を使用した「人工授精」の様子

妊娠確定の経過

令和2年11月頃、血中黄体ホルモン(妊娠を示すホルモン)濃度の上昇を確認
令和3年1月26日、超音波検査で胎仔を確認できたため妊娠を確定

超音波画像

(実施日:令和3年2月14日)

体長約15cmの胎仔が動く様子も確認しています

名古屋港水族館での鯨類繁殖

名古屋港水族館では、平成13年の北館開館当初から鯨類の若齢個体を中心とした飼育、繁殖研究を進めてきており、平成20年代からは繁殖による出産も経験してきました。バンドウイルカについては、これまで自然繁殖で3頭、人工授精で1頭が、現在まで順調に成長しています。

名古屋港水族館 栗田正徳館長のコメント

「イルカの入手は、名古屋港水族館にとって重要な課題です。今後もイルカたちを長期に展示していくうえで遺伝的な多様性を維持しながらの継代繁殖がカギとなります。
これまでにも自然繁殖、人工繁殖に取り組んできましたが、今回の遠隔地から輸送した精液を使っての人工授精の成功は、多様性維持の技術的な裏付けとなります。
雄のイルカに対する負担と経費を大きく削減することができるため、イルカたちに多くの繁殖の機会を与えることになります。
今後も、新たな技術を吸収、開発しながら種の保存に取り組んでいきます。」