ベルーガの繁殖行動を読み解く!
名古屋港水族館では2004年に日本で初めてベルーガ(シロイルカ)の繁殖に成功しました。これまでに5頭のベルーガの赤ちゃんが誕生し、そのうち2頭が現在元気に育っています。 赤ちゃんが誕生するための第一段階はベルーガの恋が成就することです。ベルーガは3〜6月ごろ繁殖期をむかえます。普段、オスとメスは、それぞればらばらに泳ぎ、お互いに全く関心をもっていないように見えますが、繁殖期に入ると、オスとメスは急接近し、繁殖期独特の行動を見せ始めます。
- オスがメスのお腹に自分のお腹を当てています(腹当て)
- 性ホルモン濃度を調べるために、
尾びれの血管から採血をしています
例えば、オスとメスが寄り添って泳ぐ行動(並泳)、体を反らせるようにして自分のお腹を相手に見せたり、当てたりする行動(腹見せ・腹当て)互いのお腹を合わせて泳ぐ行動(腹合わせ)などです。ベルーガの生殖器はお腹の下方部にあるため、このような繁殖行動は交尾に向けての準備だと考えられます。
通常、動物の繁殖期の行動変化は、体内の性ホルモン濃度の変化を反映して現れます。ベルーガでは月に1〜2回、血液検査にて性ホルモン濃度を測定しています。また、トレーニング中に尿が採取できた場合は尿中の性ホルモン濃度も測定しています。
現在、ベルーガの繁殖行動と性ホルモン濃度の関係を調べる研究を岐阜大学と共同で進めています。2013年度の結果から、4〜5月にかけてメスの性ホルモンの1つであるエストロゲン濃度が上昇すると、それにともなってオスからメスに対する繁殖行動が増加していることがわかりました。そしてメスのエストロゲン濃度が最も高い値で推移している4月下旬に、繁殖行動が特に多くなったことから、オスの繁殖行動はメスの発情状態を捉えて発現したのだと考えられます。2013年度、2014年度とも、繁殖行動は見られたものの、残念ながら妊娠にはいたりませんでした。繁殖行動と繁殖生理に関する研究の継続により、その成果を今後の繁殖に活かしたいと思います。