ブタバナガメの繁殖生理
名古屋港水族館では2008年よりブタバナガメ(スッポンモドキ)の仔ガメが誕生しています。ブタバナガメの飼育下での繁殖は珍しく、継続的に繁殖しているのは実は世界でここだけなのです。このため繁殖生理についてはあまり報告がなく、私たちで研究を行うことにしました。名古屋港水族館のウミガメ研究の経験から、ブタバナガメでも同じように定期的に採血を行い、血液中のタンパク質、脂質、電解質、そして性ホルモン濃度の変化を調べました。性ホルモン以外の項目は私たちで少量の血液で測定できますが、性ホルモンは調べることができません。
- 国内初の繁殖成功に対し、
2009年に日本動物園水族館協会の繁殖賞を受賞
- 図1. オス3個体(Ci-05、Ci-06、Ci-10)の
テストステロン濃度の変化
専門の機関に測定を依頼するには多量に採血する必要があります。ウミガメは体が大きくたくさん採血しても平気ですが、ブタバナガメではそうはいきません。どうしようかと困っていたところ、岐阜大学から「一緒に研究をしませんか?」と提案していただきました。岐阜大学では少ない血液量で性ホルモンを測定できるため、カメに負担をかけません。こうして岐阜大学と共同で繁殖生理の研究が始まりました。 名古屋港水族館ではブタバナガメは11月下旬から12月上旬に交尾がみられます。そして、ちょうどそのころオスのテストステロンの濃度が上昇していることがわかりました(図1)。
現在はオスを3匹飼育していますが交尾をするオス(Ci-05)は決まっていて、その個体のテストステロン濃度が一番高く上昇していることも興味深いです(図1)。メスの調査でもお腹の卵胞の発達に合わせて中性脂肪などの濃度が上昇することがわかりました。排卵された卵に卵殻が形成される様子もエコー(超音波画像診断装置)で観察できました(図2)。
このように少しずつ繁殖生理がわかってきましたが、まだわからないこともたくさんあります。これからも研究を継続して未解明な繁殖生理の解明に貢献したいと考えています。
- 図2. メスのお腹のエコー画像
卵殻のできた卵で、直径約4cmです