研究・繁殖・環境
2017.04.03

ユウの観察記録からみる、 バンドウイルカの授乳行動の変化

2013年9月15日、体長125cm、体重20kg(推定)で、バンドウイルカの赤ちゃん「ユウ」は誕生しました。生まれた次の日から母親「アン」の母乳を飲んで、4カ月で体長167cm、体重62kg(推定)に成長しました。私たちは、生後2週間までは毎日、その後は1カ月に2回、24時間体制で、ユウの観察を続けてきました。1分毎にユウの行動(泳いでいるのか、休んでいるのか、何に興味を示したか、排便は正常か等)を記録した観察結果の中から、授乳行動の変化についてご紹介します。1時間あたりの授乳回数と時間をまとめたグラフを見てみましょう。

1時間あたりの平均授乳回数、時間の変化を表したグラフ

成長するにつれ、どちらも大きく変化していることが分かります。授乳を開始して間もない、2日齢(14.4回/時、69.4秒/時)でグラフはピークを迎え、成長とともに減少していき、18日齢(2.2回/時、16.9秒/時)以降は大きく変化することなく、ほぼ一定に落ち着きました。 これに伴い、行動も変化していました。初めのうちは、泳ぎながら行う授乳が難しいのか、長い時間吸い付いていられませんでした。さらに、飲んでいる最中や、離れる瞬間にたくさんの母乳をこぼしていました。日を重ねると、泳ぎながらの授乳に慣れたのか、短い時間で離れてしまうことがなくなりました。今ではアンが仰向けになっていても吸うことができるほど上手くなっています。

また、口からこぼれてしまう母乳も減り、無駄なく飲めるようになりました。 つまり、授乳回数と時間の減少は、授乳を効率的に行えるようになった結果だといえます。生後2カ月を迎えるころには、1回あたりの授乳時間も減り、5秒程度の授乳が1時間に2回もあれば十分なようです。ユウは最近、歯も生え、小さな魚の切り身を食べ始めました。授乳行動はさらに変化していくことでしょう。一方で、バンドウイルカの授乳は2、3年続くといわれています。そんなユウの成長を、授乳時間を測るためのストップウォッチを片手に見守っていきたいと思います。

アンの母乳だけで大きくなったユウですが、
魚の切り身を食べるようになりました(142日齢)