サンゴ礁大水槽からの魚のお引っ越し
リニューアルオープンするサンゴ礁大水槽は工事のために水が抜かれていました。
工事中は水槽で生活していた魚たちにはお引越ししてもらわないといけません。怪我なく無事に引越しさせるために、今回は麻酔を用いて魚を取り出しました。
一口に麻酔といってもヒトや家畜のように決まった方法は実はありません。サンゴ礁大水槽ではいろいろな種類の魚たちがサンゴ礁の生態系そのままに展示されていますから、対象の魚の生態や個々の性格に合わせたオーダーメイドの方法を個別に検討しました。
その結果、チョウチョウウオやキンチャクダイなど夜岩陰で休む魚には、休息中にそっと近づいて麻酔薬を口から吸わせて運び出しました。
写真1は口から注射器で麻酔薬を吸い込ませているニセゴイシウツボです。チョウチョウウオのように夜休む魚ではありませんが、じっとしていることが多いので、刺激しないように近づき薬を吸わせて麻酔をかけました。体重30kgほどのメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)も夜休む魚ですが、移動中に眠りから覚めて大暴れすると危険なので、麻酔薬を吸わせた上にさらに別の麻酔薬を注射して、しっかり眠らせて運びました。
タマカイは警戒心が強く追い詰めると襲ってくるので、あらかじめ睡眠薬を餌にまぜて食べさせておき、ぼんやりしたところに近づいて麻酔薬を吸わせた上に注射し、完全に眠らせて運び出しました。
写真2ではすでにぼんやりしているタマカイに近づいて麻酔薬を吸わせています。
獰猛(どうもう)に見えるウツボですが、ニセゴイシウツボはそうでもありません。そっと近づくと大人しくしているので、その間に麻酔薬を吸わせます。
少しぼんやりしたタマカイに麻酔薬を口から吸わせています。真正面から身構えると突っ込んでくるので、横からのアプローチです。
は引越し先の水槽でタマカイに覚醒させる薬(拮抗薬)を注射して麻酔から覚まさせているところです。目が覚めた瞬間に襲ってくるので、実はみんな冷や冷やしながらの作業です。このような方法でほとんどすべての魚を無事に移動することができました。水槽が出来上がった後にはまた同じように麻酔をかけて新しい水槽に戻ってきてもらう予定です。古株の魚たちは新しい水槽を気に入ってくれるでしょうか。今から楽しみです。
このタマカイは体長2m、体重120㎏もあります。みんなでタマカイを支えて目覚めるのを待っていますが、襲われないように逃げるルートは確認済みです。