研究・繁殖・環境
2020.05.25
ナンキョクオキアミの繁殖研究
世界初ナンキョクオキアミの繁殖
魚やペンギン、アザラシ、さらにはクジラまで、南極海に暮らす多くの生物のエサとして大変重要なナンキョクオキアミ。
名古屋港水族館では、1992年より飼育に挑戦し、2000年に世界で初めて繁殖に成功しました。
成長過程
1. 卵
水中に直径約0.6mmの卵を300~2,000個ばらまくように産み、5、6日後には幼生が孵化します。産卵したら卵だけを新しい海水の入った容器に移します。

2. ノープリウス幼生
幼生期は、毎日、掃除と水換えをしますが、幼生にゴミや水中の気泡がついていることがよくあるので、ピペットを使ってやさしく取り除くことが重要です。

3. カリプトピス期
孵化から約25日後、エサを食べ始めるのでプランクトンを与えますが、その量がポイントになります。エサの与え過ぎは水を汚しますが、少なくても共食いをしてしまいます。

4. ファーシリア幼生
産卵から稚オキアミになるまで、およそ4カ月。産卵期は数カ月に亘るので、幼生の飼育は半年を越えます。

繁殖成功の3つのポイント
日照条件
名古屋港水族館では計画的に採卵できるように、南極大陸周辺にあわせた光周期でナンキョクオキアミの飼育を行っています。
餌の種類・与え方
植物性餌料と動物性餌料を併用し、さらに動物性餌料にはビタミン類やリン脂質などを添加し、栄養強化を施して与えています。
水質管理の工夫
名古屋港水族館では、生物を飼育する0.5度の循環系と海水の浄化を目的とした10度の循環系を併設し、飼育水の水温を上昇させない範囲で互いに混ざり合わせることで極低水温での飼育水の浄化を可能にしました。
このシステムの構築により飼育水の水質は安定し、南極の生物を長期間飼育することができるようになりました。