2025.04.23 研究
名古屋港における生物調査等に関する論文、報告が掲載されました
名古屋市内の河川や名古屋港における生物調査に関する下記論文2報、報告6報が名古屋市環境局なごや生物多様性センターの発行する「なごやの生物多様性 第12巻」に掲載されました。
※下線太字が名古屋港水族館((公財)名古屋港振興財団)職員
論文①
中嶋清徳・福岡将之・大畑史江・岡村祐里子(2025):名古屋市内の河川に生息するカワリヌマエビ類. なごやの生物多様性,12:25-35.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_03_gencho_nakajima.pdf
※名古屋市環境科学調査センターとの共同研究
<要旨>
名古屋市内5 水系の河川の5 地点に生息するカワリヌマエビ類Neocaridina spp. についてmtDNA解析および形態形質の測定を行った.mtDNA解析を行ったカワリヌマエビ類は異なる種として区別される2系群に分かれ,庄内川産および山崎川産の標本がNeocaridina aff. denticulata, 福田川産,中之島川産および植田川産の標本がN. davidiであると考えられた.特に後者は国外からの外来種として報告されている.名古屋市内の河川から得られたカワリヌマエビ類は,額角長と頭胸甲長の比,額角上縁歯数,第3 胸脚前節の湾曲度について一部の河川間で有意な差が見られたが,測定を行った形態形質においてこれら2種間の差を示す明らかな特徴は見られなかった.
論文②
大畑史江・福岡将之・岡村祐里子・中嶋清徳(2025):名古屋市内の河川に生息する水生生物(底生動物,魚類)と生物学的水質評価. なごやの生物多様性,12:37-57.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_04_gencho_ohata.pdf
※名古屋市環境科学調査センターとの共同研究
<要旨>
名古屋市の主要15 河川25 地点において底生動物および魚類の調査を行った.調査の結果,未同定種を含む146分類群の底生動物と38分類群の魚類が確認されたので報告する.また底生動物の調査結果に基づいて生物学的水質評価を行った.生物学的水質評価には指標種法,日本版平均スコア法,EPT種数,Zelinca-Marvan 法の4 手法を採用し,手法ごとの評価結果を比較した.またこれらの手法による評価結果を既存の水質調査結果と比較した結果,地点によっては生物学的水質評価結果が水質調査結果を下回ったため,この要因を推測したところ底質環境,水深,流速,河畔植生,潮汐による水位変動などが影響している様子が観測された.
報告①
加古智哉・小林清重・榊原正己・神田幸司(2025):名古屋港におけるスナメリの漂着記録(2023年). なごやの生物多様性,12:103-107.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_09_houkoku_kako.pdf
<要旨>
2023年に名古屋港では1年間の記録として最多の5頭のスナメリ Neophocaena asiaeorientalis が死亡漂着した.5 頭中4 頭は4,5 月に漂着した.また5 頭中3 頭が雄であった.1 頭は海中に沈んでいるところを発見し,回収して解剖を行った.発見から2 日が経過してから解剖したが,内臓等は比較的新鮮な状態を保っていた.胃内容物は魚やイカなどのわずかな欠片のみであった.目立った外傷は見られず,死因は不明であった.
報告②
榊原正己・小串 輝・大島由貴・春日井 隆(2025):名古屋港ガーデンふ頭で観察された鳥類. なごやの生物多様性,12:119-136.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_12_houkoku_sakakibara_s.pdf
<要旨>
伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭とその隣接水域において,2022 年4 月から2023 年3 月の間で計45 回にわたって,ラインセンサス法を用いて鳥類相を調査したところ,10 目25 科45 種の鳥類を確認した.このうち8 種は全調査日で確認し,さらに4 種においては調査中に繁殖行動もしくは子育ての様子を確認した.ガーデンふ頭は1980 年代初頭に整備が始まり,約40 年を経て植林された樹木が成長し,人工林を形成しているが,一部の鳥類にとって繁殖可能な環境であることが分かった.さらに,ガーデンふ頭は渡りを行う鳥類にとっては中継地としても機能していることが示唆された.
報告③
春日井 隆・小林清重(2025):名古屋港南部に位置する新舞子マリンパーク魚釣り施設で釣獲された魚類. なごやの生物多様性,12:137-154.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_13_houkoku_kasugai.pdf
<要旨>
2022 年および2023 年において,名古屋港南部の人工島に位置する新舞子マリンパーク魚釣り施設において釣獲生物の調査を行った.調査は101 回実施し,釣り人が釣獲した生物を目視で確認,標本採取を行った.調査の結果,2 年間で8 目35 科53 種の魚類を確認し,そのうち8 目29 科42 種について標本登録した.
報告④
中嶋清徳・三木優矢・中野秀彦(2025):伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭で採集された十脚目甲殻類(第2 報). なごやの生物多様性,12:179-185.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_18_houkoku_nakajima.pdf
※ドリスジャパン株式会社との共同研究
<要旨>
伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭において2010 年から2023 年までに採集された十脚目甲殻類の標本から,抱卵亜目のコエビ下目2種,異尾下目3種,短尾下目3種の計8種が新たに確認された.1992 年以降の調査で名古屋港ガーデンふ頭にて確認された十脚目甲殻類は計33 種(根鰓亜目5 種,抱卵亜目コエビ下目 8 種,アナジャコ下目 1種,異尾下目3種,短尾下目16種)となった.
報告⑤
中嶋清徳(2025):名古屋市内の河川に生息する淡水性十脚目甲殻類. なごやの生物多様性,12:187-193.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_19_houkoku_nakazima.pdf
<要旨>
2022 年から2024 年に名古屋市内4 河川の4 地点において淡水性十脚目甲殻類を調査した結果,コエビ下目5 種,ザリガニ下目1 種,短尾下目1 種の計7 種が記録された.このうちミナミテナガエビMacrobrachium formosenseについては愛知県内では2例目,名古屋市内からは初めての記録である.
報告⑥
坂岡 賢・安藤友佑・星野昂大・尾田愛実・赤尾奈美・廣田神奈・藤松詩香・渡邊蒼太・池田翔悟・中嶋清徳(2025):伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭で観察されたクラゲ類. なごやの生物多様性,12:217-227.
https://www.city.nagoya.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000103/103464/12_23_houkoku_sakaoka.pdf
<要旨>
伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭にて,1992 年から2024 年に渡りクラゲ類の出現状況を調査した.その結果,刺胞動物門のクラゲとしてヒドロ虫綱7 種及び鉢虫綱2 種,有櫛動物門のクラゲとして有触手綱2 種及び無触手綱2 種の合計13 種が採集された.採集種数は2~3 月にピークを迎え,4~6 月に減少に転じ,7~8 月には出現せず,10 月から再び増加した.夏季(7~8 月)にクラゲが採集できなかった原因として,著しい高水温により生息可能な種が存在しなかった可能性,もしくは河川水の流入による海表面の低塩分化,季節水温躍層の形成,植物プランクトンの増殖に起因する表層海水の濁りによりクラゲを採集出来なかった可能性が考えられた.

Neocaridina davidi ミナミテナガエビ

カンムリカイツブリ コアジサシ

ドフラインクラゲ アカクラゲ

タケノコメバル ヒイラギ

スナメリ