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水族館の活動 ACTION

2024.03.18 種の保存

繁殖の取り組み(ウミガメ)

世界初の偉業

1992年にオープンした当館は、1995年に世界で初めて屋内施設でのアカウミガメの繁殖に成功しました。これはウミガメの繁殖生理に影響を及ぼす水温等の飼育環境を人為的にコントロールしたうえで繁殖を達成したという点で画期的な出来事でした。さらに、1998年にはタイマイについても世界で初めての屋内施設での繁殖に成功しています。

アカウミガメの繁殖行動

交尾

名古屋港水族館のアカウミガメは2~5月が交尾をする恋の季節です。水槽の上部に備えた夜間の暗闇でも撮影できる高感度カメラの映像をモニタリングして、その行動をつねに確認できるようにしています。

産卵

恋の季節が過ぎると4~6月に産卵シーズンを迎えます。夜間の暗闇の中、水槽につながった人工砂浜に上陸したメスは後ろ足をショベルのように器用に動かし直径25cm・深さ50㎝くらいの穴を掘り、その穴に卵を産み落とします。名古屋港水族館における産卵では1回の産卵で平均85個程度の卵を産み、メスは通常1回の産卵シーズンで3~5回の産卵を行います。

産卵中のアカウミガメ

人工ふ化

人工砂浜はウミガメの産卵に適した造りになっていますが、卵を温める機能は備わっていません。そのため人工砂浜に産み付けられた卵をそのままにしておくと子ガメのふ化が期待できません。そこで産卵があった翌日には卵を掘り出して水族館の南側に隣接する建物である『カメ類繁殖研究施設』の砂の温度をコントロールすることができる人工ふ化場に移設して卵の管理をしています。
ウミガメは29℃より高温で卵を孵卵するとメスに、低い温度で孵卵するとオスになる割合が多くなる特徴(温度依存性決定)があります。そのため、名古屋港水族館では性比の偏りが発生しないように砂の温度を29℃に設定して人工ふ化場の管理を行っています。

アカウミガメの這い出しの様子

 

繁殖に関する実績

1992年に開館して以来数多くのウミガメの子ガメが誕生してきました。
特にアカウミガメは延べ6頭のメスが196回の産卵で16,829個の卵を産み、そこから10,007頭の子ガメが誕生しています。(2023年現在)
この中でも個体番号「Cc97-11」という1997年に生まれた個体は23歳となった2020年に初めて産卵し、それらの卵から子ガメが生まれました。つまり飼育個体の孫世代が誕生したこととなります。これはアカウミガメのライフサイクル(生活環)を水族館内で完結させることに成功したことを意味し、長寿であり性成熟の年齢もはっきりわかっていないウミガメの研究として一つの大きな成果と言えるものとなりました。