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水族館の活動 ACTION

2024.06.14 種の保存

繁殖の取り組み(鯨類)

 繁殖にかかわる飼育管理や検査など

名古屋港水族館では2001年より鯨類飼育を開始し、バンドウイルカ・カマイルカ・シャチ・ベルーガと4種類の鯨類の繁殖に成功してきました。水族館の役割の一つに種の保存があります。飼育鯨類から得られる繁殖生理に関するデータや繁殖にかかわる行動観察などから得られるデータを蓄積することによって、生態の解明や繁殖成功につなげていけるよう研究活動を実施しています。

(左)ベルーガの超音波検査の様子
(右)バンドウイルカ新生児の採血の様子

シャチの乳列幅の測定

国内で初めて成功したベルーガの繁殖

名古屋港水族館の鯨類で最初に繁殖成功した鯨類はベルーガでした。生息域の日照を参考に日長時間を調整したり、水温を13~18℃に設定したりするなど飼育環境を整えることで、雄と雌ともに血中性ホルモンで春が繁殖期となる季節性を確認できるようになりました。また、毎日の健康管理の徹底や雄雌個体の組み合わせを工夫した結果、2004年に日本で初めてベルーガの繁殖に成功しました。これまで6例の出産があり、妊娠期間・出産前後の体温変動、妊娠期間における胎児の超音波検査など色々な繁殖に関わるデータ蓄積を行っています。2007年に誕生した「ナナ(雌)」、2012年に誕生した「ミライ(雄)」が順調に成長しています。「ナナ」は国内で繁殖したベルーガとして最長飼育記録を日々更新しています。

(左)誕生したばかりの「ナナ」
(右)元気な様子の「ナナ」(左)と「ミライ」(右)

当館で初めてのカマイルカの繁殖

ベルーガ繁殖の次にカマイルカの「アイ」が2009年に誕生しました。それまで飼育下繁殖したカマイルカで1歳以上成長した赤ちゃんは3例しかいませんでした。他の水族館での過去のデータを調べたところ、魚を食べ始めるときにうまくいかないことが多かったようで、生後3か月になったころに医療用プールで「アイ」に昇降床を使って魚を口の中に入れて与え続けたところ生後4か月にはうまく食べ始めました。その後は定期的に体重測定も行って魚の量を調整し、すくすくと成長しました。

(左)誕生したばかりの「アイ」
(右)昇降床を使った摂餌トレーニング

バンドウイルカは自然繁殖で経験を積んで、人工繁殖へ挑戦

バンドウイルカは2001年の北館オープン当初より、自然繁殖へ取り組むことと同時に人工授精の技術の習得に取り組んできました。自然繁殖では2013年に初めて繁殖を成功し、出産や子イルカの成長に関するデータや経験を蓄積してきました。また、血中性ホルモン動態や超音波検査による排卵時期の特定や精液採取の手技や保存方法の技術向上に取り組み、2018年に初めて人工授精での繁殖に成功しました(国内3例目)。

誕生したばかりの赤ちゃんイルカと母親

シャチ「ステラ」の出産

2012年、千葉県の鴨川シーワールドから来たシャチの「ステラ」が「リン(雌)」を出産しました。「リン」はその後すくすく育ち、元気に過ごしています。現在は三重大学、岐阜大学、近畿大学などの国内の大学と連携して、雄雌の繁殖生理やシャチの社会性や行動について共同研究を進めています。

(左)誕生したばかりの「リン」と母親の「ステラ」
(右)共同研究。雌ホルモン検査のための採尿の様子

鯨類飼育の将来のために

名古屋港水族館では2017年にバンドウイルカの繁殖を目的として動物園・水族館の間で動物を移動させる「ブリーディングローン」を実施しました。雄3頭を神奈川県の八景島シーパラダイスに移動し、2021年には雌個体との赤ちゃんが誕生しました。また、2021年にはカマイルカの「ニック」がブリーディングローンで移動し、現在は福岡県の海の中道マリンワールドにいます。「ニック」は元気に過ごしていて、福岡での繁殖が成功できるように期待しています。

(左)八景島シーパラダイスでのバンドウイルカ3頭
(右)海の中道マリンワールドでのカマイルカ「ニック」

現在、日本動物園水族館協会では飼育動物の配偶子(精子・卵子)を回収・保存・活用し、国内の動物園・水族館で人工繁殖を推進するための「配偶子バンク事業」を進めています。名古屋港水族館では国内の水族館で採取された鯨類の精液保存のための貯蔵する「液体窒素タンク」を管理し、国内の鯨類が継続して繁殖できるよう事業に協力しています。

液体窒素タンク