©2024 All Rights Reserved. Nagoya Port Foundation

スタッフコラム COLUMN

2022.12.01 無脊椎動物

アオリイカを展示しました

俊敏で半透明の体が美しく、私たちにもなじみ深いアオリイカ。非常に繊細でデリケートな生き物であることから、実は飼育が難しい生物です。

初めて飼育を担当した私にとって、知多半島で採集してから展示に至るまでの約4か月間はアオリイカについて悩み考え抜いた日々でした。ここで、「飼育員とアオリイカの記録」を少しだけ紹介したいと思います。

今回搬入したアオリイカは自然の海から採集した個体なので、環境の大きく異なる「水槽」に慣れてもらうところから始まりました。アオリイカを含むイカの仲間は傷つきやすく、非常に驚きやすいので、水槽のガラスの存在をいち早く認識してもらう必要があります。驚いたイカは墨を吐いたり、ガラスに衝突したりしてしまいます。水槽上部の蓋の開閉はもちろん、水槽内の掃除、水槽の前を通るときでさえもなるべくゆっくり、音を立てないよう、驚かせないように気を付けました。

▲搬入直後、腕を大きく広げて威嚇されました。

もっとも苦労したのは「死んだ魚を食べさせること」です。他の生き物同様、アオリイカは、自然界では生きた生物を捕食し生活しています。ですから、搬入当初は小魚などの生きたエサしか食べませんでした。しかし、生きたエサを毎日用意することは労力・時間・費用がかかります。そのため、タイミングを見計らって生きたエサの量を抑え、徐々に死んだエサへと移行しました。

▲死んだエサとしてキビナゴという魚の切り身を与えました。

最初は水面から落とした魚の切り身に反応すらしませんでした。それでも諦めず、切り身の大きさや切り方に工夫を凝らし、エサを落とす位置やタイミングまで試行錯誤を繰り返しました。かなりの労力と時間がかかりましたが、少しずつ興味を示し始め、エサであることを認識し、魚の切り身を食べるようになりました。しかしその後も、前日まで食べていたのに急に食べなくなったり、エサをつかんだのに離してしまったりと油断のできない日々が続きました。

こうして振り返ると、アオリイカとの「駆け引き」は生き物と向き合う楽しさを再確認できた期間だったと思います。日々の観察や生き物について学ぶことは生き物を飼育する上で大切だと改めて感じました。

1日でも長く、アオリイカの元気な姿を見ていただけるよう取り組んでいきたいと思います。

アオリイカは名古屋港水族館 南館「日本の海」のコーナーで見ることができます。その美しさは一見の価値ありですので、ぜひ皆様、見にいらしてください。