名古屋港水族館と海洋ごみ ~その②~
「目立つ海洋(漂流)ごみ:PETボトル(プラスチックボトル)」
水族館周辺で海面に浮かんでいる海洋(漂流)ごみで圧倒的に目立つのは、ペットボトル(500㎖程度のものがほとんど)です。PETボトル、「ポリエチレンテレフタラート」ボトルの略称です。合成樹脂の1種である原料名(ポリエチレンテレフタラート)が名前になっています。お家で飼育しているペットとは綴りが一緒でも意味は全く異なります。
私が水族館飼育係になりたてのころ、90年代初めはまだ世間では500㎖ PETボトルは流通しておらず、それから数年後に出始めたころは衝撃的で、山歩きに使う水筒になる(あくまでも当時の話です)からと人からもらって収集していました。それくらい画期的なものでした。
軽くて丈夫で割れにくい便利な容器。今では日常生活になくてはならないもの、あって当たり前のようになっています。名古屋港水族館飼育係あるあるですが、有能な水温調整用の保冷剤にもなります。中に水を入れて凍らせておき、生物輸送などで飼育水に浮かばせて直接冷やしたり、間接的に冷やしたり。キーパーヤードの冷凍庫の中には、生物輸送時等に備えて出番を待つペットボトルがキンキンに凍ってスタンバイしています。彼らはリユースされています。
(※注:再利用はメーカーとしては推奨しておらず、また再冷凍も保証されていません。あくまでも自己責任でお願いします。)
けれども、ひとたび野に放たれた彼らは、風で飛んでいきやすく、水には浮かんで(ふたがしてあれば)目立つ海洋(漂流)ごみの代表格です。回収のためにいざすくおうとすると、少しの風で岸から離れていき網が届かず。陸上で拾うのはたやすいのですが、浮かんでいるときは厄介な代物です。
南極観測船ふじのなんでもない写真ですが、丸(〇)で囲ったところにはペットボトルが浮いています。これが現実なのです。

飲料用容器のころはとても重宝されたのに、その役割を終えたとたんにふとしたきかっけで海洋ごみと呼ばれてしまう彼ら、不憫でなりません。
下の写真は海から回収したペットボトル(中、右)と飲み干したばかりのペットボトル。彼らがいつから漂っているのかは不明ですが、フジツボがついていました。ちなみにこれらの回収されたペットボトル、自治体にもよるのですが、その汚損度から可燃ごみとして処理されます。彼らは本来なるべきリサイクル品とすらなれないのです。


この写真を撮るとき、風はそよ風でしたが、ペットボトルはコロコロコロコロ転がって撮影に苦労しました。彼らが風に翻弄されることをあらためて実感しました。
学習交流課 吉井