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スタッフコラム
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スタッフコラム COLUMN

2025.10.01 無脊椎動物

「あの日出会ったモコモコの正体」

 

水族館では展示や研究のため、実際に海に出向いて、そこに生息する生物を採集・調査することがあります。私は魚類担当として、知多半島の海岸でアマモ場の状況確認や生物採集に取り組んでいます。

 

さて、時はさかのぼること5か月ほど前。いつものように生物を採集するために網を曳いていると、何やら不思議な物体が入りました。

「海藻ですかね?」「いや、海綿?かな…」

そんな会話をしつつ、その不思議な“モコモコ”を水族館へ持ち帰ることにしました。
“モコモコ”は、幼魚たちの隠れ家としてちょうどよく、裏の水槽で活躍していました。

 

ところが、半月ほどたったある日。

水槽内の作業中に手で “モコモコ”に触れた瞬間、外側の砂が剥がれ落ち、その奥から小さな2つの目が!

「これ、卵だ‼‼」

顕微鏡で確認してみると、なんとミミイカの仲間の卵だったのです。

その後、続々と孵化し始め――

たくさんのミミイカたちが‼‼‼

最終的に100匹以上の米粒サイズの稚イカが生まれました。

わぁーーー‼‼

…戸惑っている暇はありません。稚イカたちの餌として生きたイサザアミを水槽に投入!

 

自分よりも大きい生物に果敢に挑む様子は小さな体に秘められた生きる力の偉大さを感じます。(´;ω;`)ジーーーン

成長に合わせて、生きた餌から冷凍のオキアミやアジの切り身へと餌を切り替えていきました。

イカやタコは体に脂肪やエネルギーを貯めることができないうえ、とても活動的なので、1日2~3回ほどの頻繁な給餌が必要です。腕の近くに餌を近づけ「食べてくれ!」と念じても、なかなか食べてくれないことも。。。

 

試行錯誤をしつつ給餌を続け、グングン成長。改めて種類を同定(どの種類かを特定すること)すると、「ニヨリミミイカ」という種類だということが分かりました。

 

そして“モコモコ”と出会ってから5か月が経った今、

 

数多く孵化した中から成体まで成長させることができた個体は数個体。胴体の部分の長さは4cmほどになり、ついに「日本の海」コーナーにて展示デビューを果たしました✨

 

展示水槽では砂に潜ったり、体色や模様を変えたりと、ミミイカらしい仕草を見せてくれます。

ぜひ、水族館でかわいらしいニヨリミミイカたちをご覧ください!

 

飼育展示第一課
尾田 愛実