2026.08.23 無脊椎動物
小さくても立派なハンター アオリイカの稚イカ
今年の6月半ば、野外で生物採集を行っていたときのことです。
砂浜にアオリイカの卵塊が打ち上がっているのを見つけました。

すごい量…。アオリイカは海藻やアマモなどの海草に産卵する習性があります。近くにアマモ場があったため、何らかの拍子にそこから外れ、砂浜に打ち上げられてしまったのでしょう…
6月半ばとはいえ、その日はじりじりと肌が焼けるような暑さ。砂浜にあった卵を手に取ると、すでに温かく感じました。
(まるでお湯みたい。これは厳しいかもしれない…)
そう思いながら卵をよく見てみると、中には小さな稚イカの姿が。しかも卵の中で必死に動いている…
(もしかしたら、育てることができるかも!)
そう思い、卵を水族館へ持ち帰ったのが始まりでした。
水族館のバックヤードにある水槽に吊るして2週間弱、次々と稚イカがふ化しました。
↑水槽内の黒い点々がすべて稚イカです。
↑顕微鏡下で見た孵化直後の個体。外套長約6.5mm
…「かわいい‼」と喜んだのも束の間。ふ化した稚イカを育てるため、ここから試行錯誤の日々が始まりました(-_-;)💦
稚イカたちを育てるのは想像以上に大変で、中でも苦労したのがエサでした。
イカの仲間は、魚のように体内に多くのエネルギーを蓄えておくことが得意ではありません。そのため、成長期の稚イカには特にこまめにエサを与える必要があり、1日3~4回、エサを与えました。
さらに、イカの仲間は基本的に動いている生きたエサに反応して捕食します。十分に成長すればアジの切り身などにエサ付くこともありますが、ふ化したばかりの稚イカには生きたエサが欠かせません。
ふ化直後は、稚イカでも捕まえられる小さなアミの仲間などを与えました。その後、稚イカの成長に合わせて、より大きなヌマエビやスジエビの仲間へと切り替えていきました。
↑ふ化から約1週間後。外套長1㎝弱。捕食しているはずなのに、まるで乗っかっているよう…
ふ化したばかりの小さな稚イカでも、自分と同じくらいか、それよりも大きい獲物に飛びつくことがあります。小さな体からは想像できないほど、捕食は大胆です。
↑ふ化から1か月を過ぎた頃。外套長約2㎝。大きさ3cmほどのヌマエビの仲間を捕らえた様子
その一方で、成長とともに食べる量も増えていきます。育ち盛りの稚イカたちのお腹を満たすため、エサの確保に苦労することもありました🚙💦
エサの時間にはハラハラすることもあります。
1匹がエサを捕まえると、そのエサを狙って複数の稚イカが一斉に殺到することがあります。
↑同じエサに2匹が食らいついている
時にはエサを抱えている仲間ごと襲うような状態になることも…
小さな見た目に似合わず、なかなか獰猛なハンターです。
そんな稚イカたちも日に日に成長し、先日、約50匹のアオリイカの稚イカを日本の海コーナーの展示水槽へ移すことができました。
砂浜に打ち上がった卵から始まった稚イカたちの飼育。アオリイカの寿命は約1年と短く、その分、成長も驚くほど早い生きものです。
今の小さな姿を見られるのもほんのわずかな間。これからどのように成長していくのでしょうか。日々変わっていく姿を、ぜひ水槽の前で見守ってください🦑
飼育展示第一課 尾田 愛実