2026.09.26 魚類
愛媛県からスマを搬入しました!
こんにちは!
皆さんは“スマ”という魚をご存じでしょうか?
スマはサバ目サバ科スマ属の海水魚です。
外見の一番の特徴は背中にある縞模様で、“シマ”が徐々に訛り“スマ”と呼ばれるようになったのがその名の由来といわれています。
マグロやカツオによく似た体型をしており、それら魚類と同じく高速遊泳が得意な魚です。
食味が良いことで知られていますが、漁獲量が少ないことから“幻の高級魚”などと呼ばれることもあります。
↑黒潮大水槽のスマ(かっこいいですね~!)
さて、名古屋港水族館では日本の海コーナーの“黒潮大水槽”にてスマを展示しています。
搬入前の時点で泳いでいるスマは5尾のみ…。
スマの搬入は2年に1回のタイミングで行っており、“もう少し泳がせたいな”と思っていたところにそのタイミングがやってきました!
行先はなんとはるばる愛媛県南宇和郡愛南町!
なぜ愛媛県まで赴いたかといいますと、愛媛大学南予水産研究センターにて、スマの完全養殖がおこなわれており、そのスマを水族館用に分けていただくためです。
今回分けていただけるスマたちは、なんと完全養殖5代目!養殖業の盛んな愛媛県ならではの情熱と技術力の高さが窺い知れます。
ちなみに完全養殖とは、人工的に育てた魚から採卵し、卵から生まれた稚魚を育成、次の親として採卵…というように100%管理下でライフサイクルを完結させる技術のことです。ある程度のコストがかかり、高度な技術が求められる反面、天然魚に負担をかけないこと、漁獲が不安定になることもある天然魚と比較して供給が安定することなどのメリットがあります。
養殖の盛んな愛媛県では、県内産のスマを“媛スマ”と名付けてブランド化しています。
皆さんもぜひ機会があればご賞味ください!
話が少しそれましたが、スマの搬入に動いたのは9月3日の朝7時!
ここから愛媛県への長旅が始まります。
車を走らせ向かうこと約9時間!16時頃に目的地の愛媛県愛南町に到着しました。
その後、愛媛大学の先生と翌日の朝からの作業の打ち合わせを行いました。
↑生け簀のある入江。波が穏やかで養殖に適しています。
4日朝。水族館への輸送の準備はまだ空の暗い朝5時台から始まります。
水族館までスマを運ぶ“活魚車”に海水を汲みつつ、愛媛大学の先生方、学生の皆さんがスマの入った生け簀を港の岸壁に寄せてくれます。
活魚車の準備、生け簀から魚を掬う準備が整ったらいざ開始です!
↑生け簀を港の岸壁に寄せる
まずはスマを生け簀から掬わないことには始まらないのですが、まずそれが一苦労!
前述したとおりスマは非常に遊泳力に優れた魚です。餌を撒き、寄ってきたスマを掬うのですが、速くて簡単には捕まりません。また、スマは水の抵抗を極力減らすため、体の限られた部分にしか鱗がありません。そのため、体表がデリケートで、普通の網で掬うと体表が擦れてしまいます。そこで活躍するのが、網の底がビニールになっていて水ごと魚を掬うことができる水ダモ!…なのですが、普通の網より水の抵抗を強く受けるため、よりスマの捕獲は難しくなります。。。
↑スマを生け簀から水ダモで掬う。なかなか捕まらない。
苦労して捕獲したスマは一度ビニール袋に入れられ、飼育ができる状態の個体かどうか、飼育員の目で一尾一尾確認します。
このチェックを通り抜けたスマがバケツリレーの要領で活魚車の水槽に収容されます。
↑スマは状態が問題なければ活魚車へ!
今回活魚車に収容したスマは53尾!
ここから愛媛から名古屋港水族館への長旅がスタートです。
(スマ活魚車内の様子)
出発は朝8時!途中でスマの状態や水温などを確認しつつ、名古屋港水族館に到着したのは17時!
輸送に動いた飼育員たちはお疲れの様子…。
無事に水族館まで輸送できたことにホッと一息…ですが、ここからスマを黒潮大水槽に収容しなくてはなりません。
黒潮大水槽のバックヤードの高さはビルで例えると5階相当!
人力で運ぶことは到底不可能なので、クレーンでスマを入れたタンクを釣り上げて収容します。
↑クレーンでタンクを引き上げる様子。
水槽に仲間入りしたスマたちの様子は…
元気よく群れで泳いでおり、一安心です!
(スマ収容後の様子)
今では水槽の環境にもすっかり慣れて、元気に餌を食べております。
現在はまだ魚体が小さく、スマ本来の精悍さが表れつつもあどけなさが残る、可愛い見た目をしています。この姿が見られるのも限られた期間です。
是非皆さん、可愛いスマたちをご覧になってください!
余談なのですが、スマは地方により様々な呼び名があり、中でも房総半島では“ワタナベ”と呼ぶことがあるようです。
私の苗字もワタナベなため、「ワタナベがワタナベを運搬中!」という冗談を帰りの車内で言いたかったのですが、他の飼育員もお疲れの中で言うと愛媛県に置いてきぼりにされる可能性があるため黙っていました…(笑)。
飼育展示第1課 渡邊 陸